クリーダの付けた印をスフェーンに見られてしまった。

スフェーンは目を見開き呆然とした顔でそれらを見つめ、震える手で印の正体を確かめる様に触れている。

「いやらしい、信じられない」

どんなあたしを望んでいたのか知らないけど、スフェーンの理想である必要なんて全くないじゃないか。
何も知らないくせに勝手な評価をされて、あたしはちょっと腹が立った。

『信じてなんてくれなくていいよ、
 あたしはスフェーンがどう思おうと自分で考えて自分で行動するんだから』

そう言ったとたん、スフェーンがギュッとつねった。

『イタッ!何すんのよッ!』

「これ付けたのってあのクリーダって人なんでしょう?」

スフェーンは凄く落ち着いた声で聞いたよ。
その返事をあたしは少し考えていた、クリーダを巻き込みたくなかったからね。
でも、この際だからハッキリとさせようと思って言ったんだ。

『うん』

「いつからなの?」

そう聞かれてあたしはビックリした、一昨日からだって事にね。だってすっごく前な様な気がしてたから。
一昨日までそういう対象と思ってなかったクリーダを、今は大事にしたいと思ってる事にも驚けた。

『一昨日から』

「そんな…たったそれだけで」

スフェーンはガクッとあたしの上にうな垂れ、その拍子に結んでいた長い髪がほどけてパサッと落ちた。
やわらかい髪があたしの体に広がり、少しくすぐったい。

「全部食いちぎってやる」

そう聞こえた次の瞬間、胸に激痛が走った。

『うぎゃーーーーッ!!!』

スフェーンがあたしに噛み付いたんだ。
たまらずあたしは逃げようとしたけど、強い力で押さえ込まれて動けなかった。

『やめてッ!イタイッ!!!』

余りの痛みにスフェーンをバシッと殴ったらやっと離してくれた。

「ほら、あたしも付けられたよ」

スフェーンが噛み付いた所が真っ赤になって、点々と血が出て来ているのが見えた。