捜査本部が設けられた。

害者は佐山力子44歳。

死因は頸部圧迫による窒息死。扼圧痕があったことから扼殺。

全身に数ヵ所打撲有り。

2階から、突き落とされ、階段を転げ落ちたのち殺害された、ということは、階段の上で争って落ちたか、ムリやり突き落とされたかであろう、と思われる。

死亡推定時間は、11月3日午後7時30分から8時30分の間。

指紋に関しては、佐山夫婦以外のものは検出されなかった。

犯人は手袋をしていたと思われる。

「犯人が家の2階に上がったとなると、これは顔みしりの犯行かもしれませんね」

真顔の気品刑事が言った。

「その、顔見知りの人物と、何かトラブルになって、突き落とされたか」

と、他律刑事。

今度は天災警部が

「室内は荒らされた形跡はなし、取られた物もないっちゅーことは、怨恨の可能性が1番だろうなあ。犯人は最初っから殺害目的で佐山宅を訪れた。佐山デカチョーの方に恨みを抱いてた輩が、最初は事故死にでも見せかけようとして階段から、突き落とした。佐山がいないため奥さんが犠牲になったというのは、どうだろう」

「そうなると力子婦人と犯人は顔見知りとは限りませんね」

「うむ」

「さーすがあ、けーぶの読みは深い」

他律刑事が感心すると他の捜査員達も顔を見合わせ、その線かもと頷いた。

誰かが一人手をたたき始めると他の者も拍手し始め、拍手喝采となった。

天災は頭をかき
「どーもどーも、いやいや」

などと皆に手を振って、その部屋から出て行った。

(しかし、ちゅーことになるとヤクザ絡みかもしれんなあ、いやだな)

自分で振っといてユウツになるダメ警部だった。