「キャリアをどう思う?」

佐山が問う。

「うちみたいな外れ署にはキャリアはおらんだろう。別に気にならんよ」

「確かに。署長もノンキャリだが・・・」

「ヤクザ相手は大変だろう」

話しが変わった。

捜査4課といえば暴力犯捜査係と言って、暴力団が関係する犯罪を扱う。

殺人、暴行、恐喝、覚醒剤、拳銃等の武器の押収等々、暴力団組織の撲滅に、尽力している。

「いや、そんなことはないよ。みんな大人しい奴ばかりだ。ヤクザは警察には、はむかわないのさ。詰まらんことでム所なんかには行きたくないだろうからね」

「ふーん。で、佐山は警部補の昇任試験は受けんのか?」

また、話題を変えてしまった。

自分で振っておいて、大して関心なさそうな天災である。

「受けてるんだけどね・・」

佐山はばつが悪そうに、頭をかいた。

気がつくと店は客でいっぱいになっていた。

奥のほうで若者達が騒いでいる。

佐山は時計に目をやった。

「もう10時を過ぎてる。早いな、時間のたつのは」

「お、もうそんな時間か」

なんだか天災は、もちっと飲みたい気分だ。

それを見抜いたのか佐山は

「今から俺ん家で飲まないか」

と言ってくれた。

「え、いいのか、今から行って。奥さん大丈夫かあ」

天災は目を輝かせた。

佐山は子供はおらず、妻の力子と二人暮らしである。

「大丈夫だよ。天ちゃんのことはよく話しするんだ。とりあえずここを出ようか」

佐山は立ち上がり、レジで金を払った。

二人は外へ出た。

「ちょっと待ってて」

佐山は携帯電話を取り出した。

「でないなあ」

少しの間、耳元に電話をあてながら呟いた。

「いないのかい」

「いや、出掛けるはずはないんだが、風呂でも入ってんだろ。とりあえず家行こう」

「オッケー」

二人は車に乗り込んだ。

むろん天災は助手席だ。

佐山は自家用車なので、最初の一口飲んだだけだった。

車に乗って30分ほどで家についた。