二人は五街道町にある、居酒屋「ドンパン」に行った。

まだ時間は早く、客は天災ら二人だけであった。

「こんなに早く上がって大丈夫かい、天ちゃん」

佐山は出されたオシボリで顔を拭いた。

「大丈夫だよ。十文字課長には伝えてきたからね・・・どして?」

「だって今、ヨスオ君って子が行方不明で捜査中なんだろう」

「そうなんだよ。昨日、婆ちゃん家へ行くって家を出て行ったっきり、行方が解らなくなったそうで、事故または事件に巻き込まれたかで、今の所非公開で捜査してるよ」

昨日、五街道町に住む、楽市ヨスオ君小学4年生が「お婆ちゃん家へ遊びに行って来る」と自宅を出たまま、行方が解らなくなった。

ヨスオ君家とお婆ちゃん家は3キロほど離れており、歩いて30分から40分くらいの道のりである。

夜遅くになってもお婆ちゃん家には、来なかったので、両親は心配して、その道のりを捜したり、知り合いに尋ねたりしたが見つからず、警察に捜索願いの届けを出したのであった。

「いいよいいよ。今日はせっかく佐山が誘ってくれたんだから、あっ、とりあえずビールね」

いい加減な警部さんである。

ビールと料理が来ると天災はガツガツ飲み食いしだした。

「なあ、天ちゃんはどう思う」

佐山が枝豆をつまみながら言った。

「なーにが?」

「俺らが、例えば、車で事故るとさ{ケーサツ官が事故}なんて騒がれる。一般人なら新聞にも載らないのに。サツの人間だとマスコミも目の色変えやがる」

「そうだな。むしゃむしゃ、しかたなかろう、むしゃむしゃ、わしらは、なあんも問題おこしちゃイカン、むしゃむしゃ、警察はマスコミの恰好の餌だな」

「俺らだって人間だっつーの。26万人も警察関係者がいるんだ。わりーことする奴だってなかには出てくるよな」

「本当だ。ケーカンの万引きくらいだったら、別にいいじゃねーか。さわぐなってーの」

「それはよくないし、騒ぐ」

佐山は笑みを浮かべた。

「ま、そーゆーのは一握りの人間だけどな。普通はまっとうに任務をはたしてる」

「そーだー」

天災はちょっとテンションが上がってきたようだ。