ここは、C葉県警察本部からも村八分にされ、孤立した、不潔署である。

捜査1課の天災有吉警部は、椅子に腰掛け、鼻毛をピンセットで抜いていた。

すると
「うおー、こ、これは」
と叫んだ。

回りの刑事達は
「うるせーな」

と言う顔を向けたが、花信刑事は、とりあえず寄って来て
「どうしたんですか」

と尋ねた。

「お、かしん刑事、見て見ろよこれ。白髪の鼻毛だ」

天災警部はその毛を指で詰まんで、花信刑事の鼻先に持っていった。

「鼻毛が何本あるかはわからないが、白髪が当たると言うのは、確率少ないよな。四つ葉のクローバを捜し当てた感覚だ」

天災警部は、得意げにそう言った。

花信刑事は、何も返答せず呆れて、自分の席へ戻った。

「よし、今度は、ケツ毛でチャレンジだ」

天災のチャレンジは 続くようだが、もう、あんな馬鹿警部は相手しないことを花信刑事は心に誓った。

その時である。

1課部屋の戸をコンコンと叩く者があった。

入り口の方を見るとドアが少しばかり開いていて、そこに誰かが立っていた。

そして
「失礼します」

と入って来たのは、同じ不潔署捜査4課の佐山力也巡査部長刑事(45)であった。

彼は照れくさそうに天災警部に近寄り、耳元に、こしょこしょ話しかけた。

天災は、フムフム聞いていたが、突然笑顔になり、指で丸を作り
「オッケー」

と佐山部長刑事にウインクした。

「そいじゃまたね」

佐山は手を上げ出て行った。

「4課のデカ長さんが警部に何の用だったんですか」

気品刑事が聞いて来た。

「今日飲みに行かないかって誘われたんだ」

「それでOKしたんですか」

と、山元刑事。

「おうよ。オゴリらしいからね」

そのあと

「いっひっひっ」

と、いやしい笑いを浮かべた。

オゴリに弱いらしい。

捜査1課長席に座っている十文字警視が

「天さん、佐山デカ長さんとは同期だっけ」

と尋ねた。

「いえ。歳は、一緒だけど、わしのほうがさきですわ。飲み行くのは初めてじゃないかな」

天災は首を傾げた。

そのあとは定時までの時間は、うきうきだった。