葵が、クラスメイトを睨んだ後からは…
冷やかしを言う人達は誰1人現れた無かった。

「咲良は、大事にされてるよね」
私は、その声に思わず顔を上げた。

「え…?」
「だって、2人の男の子から守られてるんだよ?羨ましいわ……私だって…明徳に」
沙羅の最後の言葉を、私は聞き逃さなかった…。

「え…?それって…」

「多分、今…咲良が思ってることと同じ」


と言うことは…沙羅が、明徳のことが好きってことなのかしら?

「…沙羅は、明徳に守られたいの?」

「まぁね…クス。無理だろうけど」
悲しげに俯く沙羅を見て、私は綺麗だと思ってしまった。


「……でも、私は…」

「分かってるわ、明徳のことを幼なじみとしか思ってない。でも、アイツは…咲良のことが好きなんだよ」


逃れられない現実…。
片思いしてる大事な親友…そして、私を好きだと言う幼なじみ…、咲良を守ると言った葵のこと…。


沙羅には、幸せになって欲しいと心から思っていた。

だけど、そんな言葉は…今は逆に相手を傷つける言葉にしかならないことは、承知している。

「今のは忘れて…」
消え入りそうな声で、沙羅は呟いた。

「でも…」
私が、言おうとするのを聞きたくないと言わんばかりに、言葉を遮る。

「いいから、気にしないでよね?私は、咲良が好き…この仲を引き離したくないもの。」

そう言われて、ただ頷いて黙ることしか出来ない自分の情けなさに、吐き気がした。