夜明け前の桜道

校門に到着した、私達を待っていたのは視線だった。

皆、葵を見ているのだろうな…。
私はそう思った。

｢さぁ、葵は職員室に行ってね｣
私がそう言うと、葵は寂しそうな表情で、｢え…？同じ教室じゃないの…｣

困惑しながら、答えた。
｢ごめんね、こればっかりは私が決めれる訳じゃないから｣

｢そっか…｣

｢大丈夫だ、別の教室でも休憩時間はよ、顔出しに行ってやるからよ｣
ニカッ…と、明徳は微笑んでいる。

｢ありがとう、明徳｣
葵は、ホッとしたように、また笑顔に戻っていた。



職員室の前に着いた私達は、｢此処が職員室だよ｣と、教えてあげた。

ドアを開けようとした時に、向こうからドアが勝手に開く。

現れたのは、私達の担任…。
谷口康夫(たにぐち、やすお)先生だった。

｢おう、お前ら…どうした？｣
｢月島葵君を、職員室に案内して来たんです｣

私が応えると、谷口先生はニヤリと笑った。

｢来宮の居候なんだってな？聞いたぞ？…もう、同棲かよ…最近のガキはませてるな…｣

｢先生違いますっ！｣
頬を、カァ…と染める。

｢くくく…冗談だよ。｣
腹を抱えて、笑いをこらえるのに必死で先生は、頭をヨシヨシと撫でてくる。

｢あ〜そうだ月島は、お前らと同じクラスだからな…勝手に案内してやれ。俺は、トイレに行って来る｣

片手を挙げてヒラヒラと揺らした。

｢……だってよ｣

明徳は、呆れ顔で｢あんなので、よく教師やってられるよな｣と呟いていた。