「俺は由紀の玩具?」
弟でもなく
男でもないのなら。
すると由紀は目を細めて、その中にしっかりと俺を閉じ込めた。
「ねえ綾人、夜を覚えてる?」
"夜"そのたった一つの言葉が俺達を繋いでいた。忌ま忌ましい共通の記憶。それが脳裏に鮮明に焼き付いている。
震える体も。
繋いだ手の温度も。
隣から漏れる騒音も。
ぜんぶ、ぜんぶ覚えている。
あのとき確かに俺達は世界にたった二人だけだった。
俺が小さく頷くと由紀は口角を一層高く上げた。
「アタシはネ、もうあの頃みたいに小さく丸まって息を殺してる子供じゃないの」


