久しぶりに那津に抱きしめられたことにより過去を思い出した。


だんだんとぼやけていく視界。


ここで泣いちゃダメだって分かってるのに…抑えられない。


グイッ


急に引っ張られたからバランスを崩してしまった。


それを那津がこけないように支えてくれ、唖稀は無言のままあたしを引っ張った。



着いた先は屋上。


雲一つない空がやけに眩しく感じた。


今屋上にいるのはあたしと唖稀だけ。


那津と浬玖はいなかった。


どうしてここに連れてきたんだろう?って疑問より一人にして欲しかった。


今は泣きたいから………。


「無理するな。 強がらずに泣けよ。 オレの胸、貸してやるから━━━…」


上から目線でいつもならイラついているところだけど今のあたしにはすごく嬉しい言葉だった。


………何より欲しかった言葉を唖稀はくれたのだった。


唖稀の優しさに触れたあたしは決壊したダムのように涙が溢れてきて…


悪いと思いながらも唖稀の胸を借りて…おもいっきり泣いた。


何も言わずただ優しく髪を撫でていてくれた唖稀にときめいたのはあたしだけの秘密━━━…。