「大丈夫よ、これからお互いを知ればいいしカレカノといったって特別なことをするわけでも・・・なくない、か。この場合はしてもらってたほうがいいなぁ」

「なななんですか、特別って!」

「普通の男子よりは親密になっててもらいたいなぁってこと。もしかして、変なこと考えた?やっぱ年頃の子だね」


葵にからかわれ、早苗は顔を真っ赤にしてうつむいた。
そこにヒスイが口を開いた。

「何だお前、そのくらいの演技も出来ないのか?」

「はぁ?」


先ほどの事を根に持ってか、けんか腰で返事を返す早苗。
ヒスイは好都合とばかりにニヤリと笑う。


「んなちょっと大げさにやるだけのことが出来ないのかってんだよ。さっきまでは初対面だろうがなんだろうが関係なく殴り倒してた癖に」

「うるさいな、それとこれとは別問題でしょが」

「別に、俺たちはいつでも辞めたっていいんだ。お前がこのままでいいんなら助けるギリはどこにもない。それを無償で助けてやろうっていってるんだ」

「・・・」

「まぁお前がどうしても演技出来な」「出来るわよっ!」


早苗が立ち上がるとヒスイも立ち上がり、二人は顔を付き合わせた。
ただし、ヒスイは笑みをたたえて、だが。

「へぇ?本当に出来るのか?」

「出来る。いや、やってやるわよ!私の演技力に驚いて腰抜かしても知らないからね」

「そりゃあ楽しみだな。恥ずかしくて出来なくなって逃げ出したら学校中の笑いものにしてやるからな」

「やれるもんならやってみなさい」


フン、と鼻を鳴らして二人は離れ、座った。
その時、ヒスイと葵が小さくハイタッチしたのをユウジは見逃さなかった。


こうして、ユウジの意向は一切無視されて一つの偽装カップルが誕生した。