流れ橋

髪を触られておきながら、黙ったまま話を聞いてたなんて。朋子が、このことを知ったら、何て思うだろう。
自分が、情けなかった。

「山下にメールしたのか?」田中くんが、たずねた。

「まだ、してない。ちょっと、待ってて。今からするから。」そういって、わたしは、慌てて朋子に連絡した。しばらくかけたが、やはり携帯につながらない。わたしは、迷ったがメールを送って先に帰ることにした。

田中くんが、自転車に乗って待っていてくれた。わたしは、後ろに腰をかけた。「じゃあ、またな。今日は、本当にごめんな。」上田が、また頭を下げた。
「もう、本当にいいから、気にしないで。」わたしは、言った。

「俊。またな。ちゃんと、送っていけよ。」上田は、田中くんの背中を強く叩いた。

「イタッ。わかってるよ。じゃあな。」そういって、田中くんは自転車をこぎ出した。

わたしが、後ろを振り返ってみると、上田が、いつまでも手をふっていた。