流れ橋

倉石さんは、そういって、わたしを見た。

「もう、やめろよ。これ以上、何もいうな。」田中くんが、吠えるような声でいった。怒りで、目が爛々としている。

倉石さんは、田中くんの声に圧倒されて黙ってしまった。

上田は、驚きの顔をしてその場に立ち尽くしている。

「いいの。わたし、帰る。」わたしは、力なく歩きだした。まわりのひとが、ユラユラとゆらめていて、周囲のざわめきが聞こえなくなっていた。

「有川。」遠くで、呼ぶ声がしたが、わたしは、歩くのをやめなかった。

彼女のいったとおりだ。今日は、来るんじゃなかった。

出店が並ぶ空き地をぬけたところで、また吐気が襲ってきた。

わたしは、近くのトイレにかけ込んだ。