流れ橋

わたしは、ただ感心して話を聞いていた。

あまりに、話しに夢中になって、わたし達の目の前に、誰か立っていることに、しばらく気が付かないほどだった。

「ちょっと、俊。やっぱり、この人と付き合ってるんでしょ。」ちょっと、ヒステリー気味な声が聞こえた。

顔を上げて見ると、倉石さんが立っている。
今日は、会いたくない人に、よく鉢合わせする日だった。

嫌な予感がした。田中くんは、「ちょっと、ここで待っててくれる?」とわたしに言って倉石さんと歩きだした。
「うん。分かった。」といったもののどうしたらいいのやら。しばらく、ベンチに座って二人の様子を、遠くから眺めていた。

何か、言い争っているように見えるけど、大丈夫かな?わたしは、心配になって、二人から目が離せないでいた。

すると、誰かベンチに座ってきた。横を振り返ると、上田隼人がいた。

「よっ。一人でいるんだ。何、見てんの?」