流れ橋

わたしは、思わず言葉につまってしまう。

何て答えていいのか分からずに、ただ暗い道を歩き続けた。

嫌な沈黙が続く。足取りが重くなり、歩く速度が、自然と遅くなっていく。前にいた人達から、だいぶ離れてしまった。この距離では、話す声も聞こえない。

いっそ、全部打ち明けてみようか。わたしは、思った。

わたしの心に思っていることを、田中くんに打ち明けることができたなら、どんなにいいか。

それなのに、心の中で躊躇する自分の声が聞こえた。

田中俊は、上田の友達だ。それに、卒業アルバムのことをまだ傷ついてるなんて、しつこくて、暗い奴って思われる。

言えない。わたしは、歩くのをやめて立ち止まった。

田中くんも立ち止まった。だけど、黙ったままにわたしを見ている。

後ろから、誰も来ない。話し声は、遠くの方で響いているだけだ。
この暗闇の中にいると、わたしは、世界に二人だけのように感じた。