流れ橋

「どうしよう。」わたしは、いった。

「大丈夫だよ。それより、先に行ってようか。」田中くんは、出口の方へ歩きだした。

わたしは、黙ってついていくことにした。

一瞬、迷ったがもしかしたら、先輩と二人きりを意図的に狙ったのかもしれない。朋子は、告白するのかも。邪魔しちゃ悪いなと思った。

わたしは、田中くんと二人きりになることが不安だが、今は、一時もはやく海の家から離れたい。それに、今更一人きりになるのは、不自然だった。わたし達は、砂浜を後にし、また暗い道を帰っていった。

しばらくすると、「さっきは、ゴメン。嫌な思いさせて。」と田中くんが、いった。

提灯の明かりだけでは、彼の表情がよく分からない。

「いいの。全然気にしてない。ただ、わたし、上田くんって前から苦手でさ。」わたしは、無理矢理笑おうとしたが、ダメだった。

「今日、待ち合わせの場所にいなかったのは、アイツのせいなんだろ。さっき、海の家で、神崎川に会って聞いた。」