流れ橋

父は、絞りだすような声で話した。

一瞬、わたしは、父が老人のように見えた。ずっとグッと我慢した怒りは消えていた。昨日、姉が話してくれたことが思い出しながら、父に話しかけた。

「わたしは、大丈夫だよ。でも、もうあんなことしないでね。みんな、お父さんの味方なんだから。」

「ありがとう。」父は、言った。

目が閉じかかっている。わたしは、話しかけるのをやめて、じっと父の顔を見た。

シワがずいぶんと深く顔に刻みこまれていて、白髪もずいぶん増えていた。

いつから、父とあまり話をしなくなったのか。父のこと、家族のことを気にかけなくなったのは、いつからだろう。わたしは、自分のことで毎日が精一杯だったから気づかないでいた。

「ごめんね。」眠りについた父に懺悔した。
帰り道、わたしは、しばらく駅のホームのベンチに座って電車を待っていた。

お父さんもわたしも、今まで人間不信に陥っていたのかな。