電車の中。


わたしは、携帯を


ポケットにしまう。


梅雨の電車内は、


湿度がたかくて


気分が悪くなる。


この空気、わたしは、思い出す。


文字がこんなに、自分を傷つけるなんて、あの時まで思わなかった。

卒業アルバムの
寄せ書きに書かれた

言葉。


【君は、負け犬やけど、頑張ってね。】


わたしは、有川藍子という田舎の高校生。

青春真っ只中にいる、17歳である。

世間では、30歳までに結婚せず、子供がいない女の人のことを、
負け犬と呼ぶらしい。
わたしは、15歳で負け犬と呼ばれてしまった。

あれから、1年半たった。

ぼんやり、窓の外を眺めている。

夕日の西日が


さしてきた。


眩しくて、わたしは


すぐ目をそらした。


わたしが通う高校は、

市内にある。

だけど、どこをどう見ても


周辺は、田畑が広がる


山の麓にある田舎高校だった。

おまけに、自宅から、自転車で


50分かかる(-.-;)


アスリートを


目指しているわけでは

ないので、当然


電車で通学していた。
ところで、どうしてわたしは、負け犬になったのか分からない。

でも、この言葉がずっとわたしを苦しめてきたのは、本当のこと。
誰に、書かれたのか。