母様が起きる気配はない。まだ眠っているのか、もしかするともう息をしていないかもしれない。

 もしそうだとすれば、この行為は無駄かもしれない。だけど、あの女を止めなくては、確実に母様は死んでしまう。

 俺は咄嗟に立上がり、母様を襲う女を目掛けて体当たりをした。

 見た目より軽いあの女は、俺の攻撃で部屋のドア近くまで吹っ飛んだ。お陰で、俺もベッドから落ちる事になってしまったけど。

「母様から離れ……!」

 俺は再び動こうとする女を引き止めようと、女の前に立ちふさがった。だけど、正義の英雄の台詞は途中で途切れてしまう事になった。

「お前はハーフファイリー?」

 俺は、後退りをせざる終えなかった。いつかの勉強の時間で、俺はハーフファイリーが忌まわしい種族だと知った。

 凄く昔に行われた種族戦争が長引いたのも、ハーフファイリーの仕業。そして現在は、市場に出ているものを勝手に取って食べたり、王に向かって反乱を起こしたりしているという事らしい。