「お前は……!」

 ベッドから起きて見ると、母様の上には見慣れない黒い装束を着た赤髪の女がいた。ドアの開く音はしなかったから、恐らく窓から入って来たのだと思う。音がしなかったのが、唯一気になる所だけど。

 しかも、ただいただけでは無かった。女の片手には短い剣が握られていた。

 この状況が屋敷でのんびり暮らしていた俺でも、普通では無い事は知っている。

「母様、危ない!」

 俺は無我夢中で叫んだ。起きたばかりのせいか、頭がまっ白で母様を呼ぶ事しか出来なかったけど。

 しかし虚しく、女は俺を横目で見た後、持っていた剣で母様の体を貫いたのだった。

「母様?」

 一瞬だった。女は冷静な顔付きで、母様の体を貫いた刃を引く。すると、刺された場所である腹部が血で滲んでいる。

 女は溜め息を付くと、懐から白い布を取り出す。そして白い布で刃に付いた赤いものを拭き取ると、再び短剣を構える。

 俺は、この動きの続きを読む事が出来た。この動作は『相手を殺す為の動作』だという事だ。それくらい俺にだって分かる。だから、俺は彼女を止めなくてはならない。