私には彼がいる。


ひとりじゃないと思うだけで強くなれた気がした。


相変わらず朝と夜が逆転した生活を続けていた。


母は仕事から帰ってくる度に家にいる私を見つけては容赦無く怒鳴る。


「学校に行かないなら出ていってくれない?ただで居候なんて図々しい!」


一度、本当に出て行こうとした事があった。

玄関に早足で向かう私の腕をこれでもかという程強く掴んで引っ張り、倒れ込んだ私を上から睨みつける。



「何服着てんの?」



「…は?」



質問の意味がわからず聞き返すと母は私の胸ぐらを掴んで体を揺さぶる。



「その服も靴も誰が買ってやったと思ってるんだ!出ていくなら全部置いて行け!!」


戸惑う私の服から手を離すと母は汚いものを見るかのような目を向ける。



「誰のおかげで生きてると思ってるんだ!自分ひとりででかくなったような顔しやがって!ひとりじゃ何もできないガキの癖に!!」



悔しくて悔しくて。

それでも10年以上母に洗脳されてきた私は母が正しいんだと思った。


何も言え返せずに泣く事しかできない自分は「ガキ」なんだと。