12時になると一度だけカーテンを開き彼がいない事を確認してベッドに倒れ込む。

一週間も来ていないんだ。

きっともう、彼は来ない。

部屋の電気を消して眠気が来るのを待つ。

耳鳴りがする程の静けさに嫌気がさし
音楽でも聞こうと起き上がって電気をつけ
机に置いてあった本に手を伸ばした時だった。




―――――口笛が聞こえる



手にした本を放り投げ、カーテンを開けると
薄暗い中にいる彼を見つけた。


会いにきてくれたんだ――――


高鳴る思いで窓を開け、彼を見つめた。


一週間ぶりに見た彼は片手に長い杖のような物を持ち
空いているもう一方の手で大きく手招きをしている。


どこか不自然な動きを疑問に思いながらも
自分がそこに行けばいいのかと人差し指で示して聞いた後、窓を閉めた。



寝巻姿だった私は
上から軽いカーディガンを羽織り、
音を立てないようこっそりと外へ出た。


初めて触れる外気は冷たく、鼻を通る。
外灯の明かりが薄く白い膜を張っているかのように映る空には、幾つかの星が疎らに輝いていた。



私の頭の中には
親にバレたらなんて考える隙も与えない程
彼が来てくれたという喜びでいっぱいだった。