しかし、だからと言って弟へ嫉妬の目を向けたり、嫌がらせをする事はなかった。


弟はいつも私に優しかったから。


ひとつ離れの雄太は、私が泣く都度隣にいてくれた。


幼かった私は
自分より幼い弟に甘えていた。


怒られて押し入れに何時間も閉じ込められた時、
その暗闇から出してくれた弟。


怒られて家の外に出され
泣いて泣いて、何度ごめんなさいとドア越しに叫んだろう。

何度周りに助けを求めただろう。

周囲の大人は哀れんだ目を向け通り過ぎていくだけ。


声が枯れるまで泣き
疲れた果てた頃、まだチェーンに手の届かない弟がこっそりと椅子を使い
チェーンを外して私を家の中に入れ、呼吸が整うまで抱きしめ慰めてくれた。



だから

私が弟を妬む事はなかった。


なぜなら当時彼は
私の唯一の居場所だったから。