車の免許も無事に取り終え、バイトも順調。

家には祖母がいる。


平坦な道を歩いているかのように見えても、私の歩く道には必ず障害が転がっている。


この時、父がお金を貸してくれと週に一度のペースで言ってきていた。




「1万貸して」


「2万貸して」


「4万貸して」



次第に金額は増え、数ヶ月前まであった貯金は見る見るうちに減っていった。


「お母さん達には内緒にしておいて」


その言葉に疑いを持たなかった訳ではなかった。
しかし、母に父がお金をくれと言えばまた夫婦喧嘩になる。
弟も、ましてや今では祖母もいるのだから、ここで自分が出しておけば事を荒立てずに済むだろうと思っての行為だった。


しかし、貸していたお金は返済してくれるという約束の下での事。
免許を取得した私は父に貸していた貯金分のお金を、車を購入する為の頭金にしようと考えていた。


そこで父に返済を求めると、今は返せないとの理由で父名義でのローンを組んでくれると約束してくれた。


車を持てば仕事の範囲も広がり、また貯金もできるのだから、それであれば父に貸した分のお金が返ってこなくてもいいと思っていた。


しかしそれから1ヶ月が過ぎても父は車を買いに行こうとはしてくれない。
何度言ってもその態度は明らかに私を避けているようで、ついに痺れを切らした私はその日、父と言い合いになってしまった。