自分で好きな名前をつけていいよと急に言われても全く思いつかず、結局オーナーが「美帆」と名付けてくれた。
その日は簡単な書類を書き、契約書にサインをして店を出た。
最初の出勤は来週に決まった。
「うちは衣装が全部レンタルだから何も持って来なくていいよ。何か聞きたい事ある?」
ひとつだけ気になっていた事があった。
「働いてる人達って、仲良いんですか?」
夜の店と言えばよくテレビドラマであるようなイジメなどがあるんだと勝手に思いこんでいた。
「うちはみんな仲良いよ。大丈夫、安心して。じゃ来週からよろしくね美帆ちゃん」
オーナーは車代と言って五千円を渡すと、またそそくさと店奥に消えていく。
私は背中に向かって軽くお辞儀をして店を後にした。


