お洒落な黒ぶち眼鏡が似合うその人に連れられ公園から歩いて店に向かう。


店までは数分もかからなかった。


私が働く店は愛美とは違う店。


系列は同じだが、愛美が実際働いていたのはクラブではなく、所謂お触り有のお店だったのだ。


私が働くのは、3階建の真っ白なビルの地下にあるクラブ。


店内に電気はついているものの、オレンジ色の明かりだけで薄暗い。


然ほど広くもなく、大きなグランドピアノを囲むようにしてテーブルが連なっている。
私は着いてすぐカウンター席に通された。

カウンターにはブランデーや焼酎のボトルがケースに入りきれない程並べられていた。

所謂キープというやつで、それぞれボトルにはキーホルダーのような名札がつけられていた。


私を案内してくれたボーイはそのままどこかに行ってしまい、それと入れ替わりに店の奥からファイルを持った40代らしき男の人がそそくさと現れる。


オールバックにした黒髪はガチガチに固められているようで、綺麗に櫛の跡がついている。

ぎょろりとした上向きの目尻の目が怖いという印象を与えた。


「おまたせ。ユリの紹介だよね?」


「え?」


「あ、ごめんごめん。えっとユリの本名は…愛美!愛美の紹介だよね?」


「あ、はい」


「よろしくね。オーナーの柴田です」


オーナーが差し出した手を取り上下に軽く数回振ると、オーナーは私の隣にちょこんとお尻を乗せた。