「どうやったら信じてくれる？」



そんな事、私が一番知りたいのに。知っていれば苦労しないのに片瀬君はまじまじと聞いてくる。

わからないと答える私の前で片瀬君は小首を傾げていた。


毎日電話やメールがくる。


今からどこに行くとか、
今帰ってきたとか。


大学にまで私を連れて行き、友達に紹介してみたり。

本当に頑張っているんだなとそれはわかっても、そんなに簡単には信じられなかった。


付き合い出して１ヶ月が過ぎた頃、仕事が終わって車の中で話している時に片瀬くんが聞いてくる。



「まだ信じられない？」


自分の為に頑張ってくれている片瀬君を見て胸が痛みが走ったのは
きっと僅かな良心から。


「信じられるよ」



それからは毎日演技をしていた。

幸せな私の演技。


そんな偽者の私に片瀬くんは毎日好きだと言った。



感情のない私となんて別れた方が片瀬君の為だと知りながらもそれを選ばなかったのは
また誰にも必要とされなくなる事が怖かったから。