「これ」


「何?」


「クリスマスの、プレゼント」


母は無言で受け取り、紙袋からコートを取り出して広げる。


「…可愛いじゃん」


「着てくれる?」


「うん」



母はそれこそ顔には出さなかったけれど、何となく喜んでくれているのがわかった。



母にコートを渡して夕方からのバイトの支度をするためリビングを出ようとした時だった。






「…ありがとう」






母は、確かにそう言った。


「うん」


小さな声で言った母は、ずっとコートを見つめていた。
嬉しくて

嬉しくて嬉しくて、涙が溢れた。


母が喜んでくれる事が、私にとってこんなにも嬉しい事なんだと胸が熱くなった。


今までの事などすべて忘れてしまいそうになる程、私の心は満たされていた。