淳の腕が私の体を抱きしめるように包み、私は起きている事に気づかれないよう息をひそめたが、それで逆に気づかれてしまった。


「おはよ」


返事をしないわけにはいかなかった。


「おはよう」


淳の方にゆっくりと体を向け直して肩まで毛布を被った。


顔を見る事もできない、何を話していいのかわからない私は間近にある淳の顔から視線を逸らすように目をつぶった。


「体痛くない?」


「…痛い」


「そりゃ痛いよな」



淳は鼻で笑い、私の額に額を重ねる。


「ねえ」


髪を撫でる手を滑らせ顎を掴み私の顔を上げさせる。


「付き合おっか?」


突然の告白の返事に迷う事はなかった。


むしろ安心していた。
体だけの関係ではないんだと。


「うん」


返事をすると淳はまた額を重ね目を閉じた。


新しい恋の始まりに胸を踊らせるのはいつも同じ。

勿論この時もそうだった。


始まったばかりの恋に疑いなんて持たない。


始まりだけはいつも幸せ。


この恋もそうだった。


永遠なんてないのに
一生この人だけを見ていると心に誓っていた。




希望も、人を信じる事も、何もかも


奪ってしまう恋だとは気づかずに。