母にお金を渡した数時間後、帰ってきた父が仕事着のまま部屋に訪れた。


「ほらこれ」


父は私が母に渡した7万円を勉強机の上に置く。



「ちゃんとおまえが持っておきなさい」


「いい。お母さんに色々言われたくないから。」


ため息をついて戻ろうとする父を呼び止めるように口を開いた。



「ねぇお父さん、お母さん病院行ってるの?全然治らないじゃん」


黙り込んだまま振り返った父の顔を一目見て、すぐにわかった。


「え。なんで?行ってないの!?」



「行かせたくても行かないって聞かないんだ」



「…そう」



この時父をあまり攻めなかったのは、父も辛いのだろうという同情からだった。