「ごめんね」


待っていてくれた淳の元へ戻り、車に乗り込む。


「大丈夫だった?」


「うん。大丈夫だった」


「よかった」


心配そうにしていた淳も私が笑顔を見せた事によって安心したようだった。エンジンをかけ、すぐに車を走らせた。


「明日ね、帰る事にしたの」


「え!?明日?大丈夫?」


「うん。いきなりだけど…ごめんね、なんか迷惑ばっかりかけてしまって」


「俺は全然いいけど…本当に大丈夫?」


信号で停車して目を合わせた淳に大丈夫だと言うとまた何かあれば力になるからと言ってくれた。


「あのさ、家に帰っても…連絡してもいい?」


「うん!あ、でも私携帯持ってないから」


「そっか…じゃあ俺の番号教えとくから電話して?」


「うん。わかった」




そこから何かが始まるとは思っていなかった。


同じ部屋に長い事一緒にいたのに、何もない時点で自分が異性として見られていないとわかる。


一目惚れしていた私もドキドキしていたのは最初の数日だけで、数日が過ぎても何も起こらない事でその胸を高鳴らせていたものも次第に落ち着いていた。