「泣かなくてもいいだろ…」


ティッシュを数枚取り、父はそれを私の前に置いた。


「…確かにお母さんはやり過ぎの所があるとお父さんも思うよ…」


それは初めて聞いた、父が母を否定する言葉だった。


「お父さんも私の頭がおかしいと思ってる…?
私がおかしいの?私が病気なの?
お母さんいつも言ってるじゃん私は頭がおかしいって。お母さんが普通なの?
違うでしょ?」



それを使わず雑に手で涙を拭った。



「病院に行ってみるか?」


父の口から出てきた言葉は想定外のものだった。


「…病院って?」


「近くの大学病院の精神科だよ」


「そこに言ったらどうなるの?」


「色々はっきりするんじゃないか…?」


「…お母さんも行くの?」


「ああ。説得するよ」


「お父さんも行く?」


「ああ。…そのかわり帰って来なさい。そうしたらすぐに連れていってやるから」


何かが変わるような気がした。
何かが、変わっていたような気がした。


「わかった」