「ここで待ってるから何かあったら走っておいでね」
車を降りかけた私に淳は頑張れと言うような、心配しているかのような顔を覗かせた。
「ありがと…」
車を降りると先に家の下に着いていた父が車から降りてきて、その後に続いて階段を上がる。
久しぶりに入った家は何ひとつ変わっていなかった。
煙草の匂いがする薄暗い息苦しいリビング。
仕事に行っているのかそこに母がいないだけでも大分気が楽だった。
「そこ座りなさい」
父はダイニングの椅子に座り、私に向かい合って座るよう人差し指で示す。
「一体今日までどこに行ってたんだ?」
「…………」
「学校行ってないだろう」
「…………」
「あの男はおまえの彼氏か?」
「…………」
「黙っていたらわからないだろう」
「…………」
「さえこ…」
「…何?」
「おまえは一体何が不満なんだ?」


