「悪いけど娘を送ってもらえるかい」
半分程開いた窓から奥にいる淳の顔を覗き込んでいる。
「…あ、はい」
突然の事に、淳は驚き戸惑っているようだった。
「いいか、今から家に来なさい」
行くつもりのない私は父を無視して淳の車の助手席に乗りこんだ。
「お父さん…?」
父は前方から車に乗った私を見ていた。エンジンをかけて淳は父に軽く頭を下げる。
「うん」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。ごめんね」
「えっと…どうしたらいんだっけ?」
「いいよ行かなくて」
だけどと淳が私に返事をする前に父はまた淳の横まできてフロントガラスを叩く。
「頼んだよ。家は娘に聞いて」
窓を開けた淳に父は低い声で念を押した。


