「…お父さん」



喉の奥から声が滲み出る。


「おまえ今どこにいるんだ!?」



「………」



圧倒される程の剣幕で父は私にずかずかと近寄った。



「あれは誰なんだ」



眉間にしわを寄せ、顎で淳を示す。



「あの男と一緒にいるのか?」



答える気などなく、ただ目線だけを外方に向ける。


暫く私を見下した後、父は車にいる淳の元へ行こうと歩きだし、私はそれを阻止しようと慌てて父の前に飛び出し立ち塞がった。



「お父さんに関係ないでしょ!!」


睨み上げた私の目に父は威嚇するような視線をぶつけてくる。


「おまえどれだけお母さんとお父さんに迷惑かけてるのかわかってるのか!?」


その言葉に私をここまで追いやった事のすべてが含まれているではないかと思ったが、父はそこに非があるとは全く思っていないようだった。


「とにかく今から家に戻りなさい」


この命令が大嫌いだった。
いつも、何時も何時も何時も。

名ばかりの癖に、親という権力の使い方だけは人一倍上手いのだから。


「なんで!?」


「色々話さないといけないだろ!!」


「人の話なんて聞かない癖に」


父は私の肩を押し避け、淳の車に近づき窓を叩いた。