食事を終えやはり挨拶とお礼だけはと淳にその旨を話したが、両親共仕事で留守にしているから
また日を改めてという事になった。


長居はできない。1日でも早く仕事を見つけなければと焦っていた。


私がバイトを探すと言うと淳は一緒になって探してくれ、履歴書の書き方も教わった。


ガソリンスタンド、ファーストフード、近所のスーパー。
16歳で雇ってくれる場所は想像以上に少ない。

情報誌に掲載されているその殆どは面接を受ける以前、電話をした時点でもう決まってしまったと断られた。

どうにか面接までいけたとしても、結果はついてこない。

それでも諦めずに毎日探していた。

住み込みのバイトなどひとつもなく、寮があったとしても18歳以上からの募集。


仕事を探しているうちに、結局は家に戻らなければならないんだと気づき頭を抱えていた。



二週間が過ぎ、その日もいつものように淳の運転で面接をしてもらうお店へ向かった。


手応えがなく、今回も駄目そうだと駐車場で待ってくれている淳の車に乗り込もうとした時だった。


「さえこ!!」



私を呼びとめた声に一瞬身震いした。


聞き慣れていた低い声。


久しぶりに聞いた声。



恐る恐るゆっくりと体の向きを変える。