玄関の大きな扉を開けるとヨークシャーテリア3匹が勢いよく飛び出して帰ってきた淳を迎えた。


「おいおいおい…」


淳は両手で犬を中に追いやると私を招き入れ、目の前にある階段を上る。


「もうみんな寝てるから俺の部屋に行こう」


音を起てないようにつま先を使って階段を上る。


淳の部屋は私の家のリビングよりも広く、革製の黒光りした大きなソファーの間に楕円型のテーブルが置いてあった。

真正面にある大画面のテレビ。部屋の端に綺麗にメイキングされたお洒落なベッド。

壁側に置かれた木製の高い本棚にはびっしりと本が敷き詰められていた。


そこに来て初めて淳は自分とは全く別の世界に住んでいるんだと思わされたのだった。


部屋全体をぐるりと見渡して佇む私の背中に淳が声をかける。


「今日はもう寝よっか?遅いし」


「あ、うん。ねぇあの、でも本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だって」


淳はクローゼットから薄い毛布を出しソファーに体を倒す。


「ベッド使っていいからね」


「あ、いいよ私…」


「おやすみ」



余程眠たかったのか、横になってものの数分で淳は寝息をたてていた。



布団の中に入り、これから先の事を考えているとなかなか寝付けず、結局眠りについたのは淳が眠った大分後だった。