眠りから覚め目を開いて一番に、そういえばけんちゃん家を出たんだとやはり忘れる事などできなかった事にため息をついた。


カーテンを閉めているせいか暗く、音楽が鳴りっぱなしの部屋に俊の姿はなく、どこからか水が流れる音だけが聞こえていた。


暫くすると俊がシャワーを浴びていたのか髪を濡らし、上半身裸で部屋に現れる。



「あ、おはよー」


「おはよ」


昨夜の事など何もなかったかのように俊は平然としていた。


「俺今からバイト行くけどどうする?行くとこないなら居てもいいけど」


「じゃあお願い。行くとこないから」



「オッケー。九時くらいには帰ってこれると思う。もし出るなら鍵、そのまま開けといていいから」


「うん。わかった」


その会話は、まるで昨日出会ったばかりだとは思わせないような感じだった。



髪を乾かしてダメージの激しいデニムのパンツと
そこらに脱ぎ捨てられていた黒い七分丈のシャツを着ると俊はいってくるねと部屋を後にした。