「家、どこですか?」


私がひっかかった事が嬉しいのか、男は若干落ち着きなくシートベルトをしめる。


「あっち」


無愛想に家とは違う方向を指さして答えると、男は同じ方向をわざとらしく指さし確認した。



「名前なんて言うんですか?」


耳に障る聞いた事もない音楽のボリュームを回し小さくして
男は左足を椅子に上げ胡座をかくように置いた。


「さえこ、そっちは?」


「あ、田口です」


まさか名字を言ってくるとは思わず私は笑い声を漏らす。


「田口って名字?下の名前は?」



「俊です」


「へぇ…」


「何歳なんですか?」


「16」


「え!?16!?」




俊は余程驚いたのか、ハンドルを握ったまま
何度も視線を前方と私とをで交互させた。


「何歳だと思ってたの?」


「タメか年上かと思った!」



俊は年下だとわかった瞬間敬語をやめた。


「待ってよ!そっちは何歳なの?」



「21」



「21!?私21歳に見える!?」



「見えるよ。16には絶対見えない」