ストライプのスーツを着た細身で眼鏡をかけたその人は、一見真面目そうな人に見えた。


「はい?」


その容姿にナンパではないのかと、一拍置いて返事をすると私は指を使って長い前髪を軽く耳にかける。



「一人ですか?」


「はい」


「よかったら送りますよ」


「え?」


「こんな所にいたら危ないですし」



―――――なんだ

この人も結局ナンパか――――――




「そっちは一人?」



「え、あ!はい」



男がこんな時間に女に声をかける事、そこにどんな意味が含まれているのかも


その先にどんな事があるのかも


痛い程わかっていた。



「じゃぁ…送って」



それでも私が車に乗ったのは、
どうにでもなれという投げやりな感情と
寂しくて、誰でもいいから傍にいたいという二つの感情からの事だった。