地元の駅に着き人通りも疎らな道を歩く。



久しぶりに戻ってきた地元に懐かしさを感じなかったのは、暗くて見慣れていた景色とは違ったからかもしれない。


大きなバックひとつ。

それだけが私の荷物だった。


行く宛もないのに地元に戻ったのは、
地元の方がなんとかなりそうだと思ったから。

知らない町で一人でいる事が寂しかったから。



だけど、結局行き場がない事には変わりなく、
駅近くのコンビニ前に座ってこれからどうするのかを考えてはため息を漏らしていた。


夏の深夜だからか、何度も知らない異性から声をかけられた。

やたらとテンションの高いその人達に返事をする事もなければ、ついていく事もなかった。


これからの事を考えなければならないのに、
目の前の道路に見覚えのある車が通ると
頭の中は違う事でいっぱいになる。


今頃けんちゃん達、何してるんだろう―――


探してくれてたりするのかな―――――


――――それとも




浮かんでくるのは
けんちゃんと紗枝が二人で笑い合う姿。



はやく忘れてしまいたいと思っても
気づけばけんちゃんの笑っている顔を鮮明に思い出していた。



どうすれば忘れられるんだろう―――――




膝を曲げた上に鞄を抱え、そこに頭を乗せ
呆然と時をやり過ごしていた。



「…あの」



突然背中から聞こえた低い声に振り返った。