紗枝が眠って、けんちゃんが帰ってくるまでの間。

テーブルに手紙と携帯を置いて、家を出た。


最終電車までは時間があって、随分ゆっくりと駅までの道を歩いた。



もう一度だけでいいから
けんちゃんの顔が見たかった。

そう思った時、まるで奇跡と思わせるかのように
けんちゃんの乗った車が私の歩いている道を横切った。


車を運転していたけんちゃんは
私には気付かなかった。




―――――――――ばいばい



けんちゃん―――――



そのまま駅に向かい、地元行きの電車に乗り込んだ。