ADULT CHILDREN

でも、それを遮るように紗枝は話はじめた。



「さえこ…紗枝もここに住んでもいいかな…」


「何があったの?」


ああ、もう駄目だ。

紗枝が住むと言った瞬間に反射的に終りを悟った。


「昨日殺されそうになった。言い合いになってさ。
私の事頭おかしいって言うから、おかしいのはあんたでしょって言い返したら包丁出されて」



その光景はすぐに目に浮かんだ。


自分が数ヶ月前に経験したものだから。
辛さもわかった。


「けんちゃんもね、ここに居ていいって言ってくれたんだ。さえこが迷惑じゃなければだけど」


「え…けんちゃんに聞いてないの?」


「ん?何を?」


紗枝の顔を見ただけでわかった。


――――――言ってないんだ



…そっか。



そういう事か―――――






やっぱり

そういう事なんだ――――――――――



言わずにいようと

決めた。



「私もうすぐ地元帰るんだよ」


「え?そうなの?」


「うん。親が捜索願い出しちゃって。見つかったんだ、この前。だから帰らくちゃいけなくなったの」


「え!戻って大丈夫なの!?」


「大丈夫大丈夫。おばあちゃんがね、同棲する事になったんだって」