けんちゃんは本当に優しくて

優しすぎるくらいで

最初はその優しさを疑っていた。


ただの顔見知りで、元は援助交際の相手にここまでしてくれるなんて


普通いない。


だから素直に、その優しさを信じる事ができなかった。


何か裏があるのかもしれないって。



けんちゃんの家に居る事を紗枝に言うと、紗枝もよく来るようになった。


私は言われた通り、毎日家の事をした。

キッチンやバスルームや部屋の掃除。

けんちゃんのスーツをクリーニングに出しに行ったり、できる限りの事は毎日した。

それでも、する事は少な過ぎる程だった。


けんちゃんは毎朝起きた時にはもういなくて、
いつもテーブルに置き手紙が置いてあった。



(いってきます。あまり無理しなくていいからね)


(いつもありがとう。いってきます)



毎日、色んな事が書いてあった。


たった一行のその置き手紙が、なんだか嬉しかった。


恋とか
そんなんじゃなくて。