「とりあえず上に行こう」


けんちゃんに肩を持たれてエレベーターに乗り、部屋に向かう。


家に着くとけんちゃんは私をソファーに座らせ缶珈琲をテーブルに置いた。



「大丈夫?話せる?」



涙を拭きながら頷いた。



「一人?紗枝は?」


「…帰りました…」


「そっか。それで一人でどこかに行ってたの?」


「電車に…乗れなくて…行くとこ…なくて…」


「うんうん」


「歩いてたらナンパ…されて…」


「着いて行ったの!?」


私は首を大きく横に振った。


「お腹殴ら…れて…」


そこまでしか言っていないのにけんちゃんは


「うん、わかった」


言葉を遮り、私にその先を言わせなかった。