「母親がいなくなった時は凄く嬉しかったよ。
本当に辛い事が多かったから。
それから親父も結構経って再婚して
仕事も上手くいきだしたみたいで家にもよく居るようになってさ。
それでわかったんだ。
あーあの女がこの家の癌だったのかってね。」



「今もそのいなくなったお母さんの事、嫌いですか？」



「嫌いだね。あの人がいた時の事思い出すと未だにイライラするし。」



「もし今お母さんが目の前に出て来たらどうしますか？」



自分で聞いて置きながら、何聞いてるんだって思ってた。



「どうするって別にどうもしないけど…
…でももし、頼ってきたりなんかしたら突き放すね。あの時の分をやり返してやる」



けんちゃんの気持ちは充分わかるはずなのに
なんだかそれを聞いて悲しくなった。


なぜ悲しくなったのかなんて
その時の私にはわからなかったけど。