いつも同じ時間。

夜の9時を過ぎると始まる。


最初は小さな声でぼそぼそ独り言のように話していた母の声がどんどん大きくなる。



その時にはもう
母の頬に涙が伝っている。


父に何を言われたわけでもない。


父は何も言わないのだから。


ただ黙って母がおとなしくなるのを待っているだけ。


「どうして何も言わないのよ!?」


母はお酒を飲むといつもこうだった。


そして最後は


「もういい!!結局私が悪いって言いたいんでしょう!!」


捨て台詞をはいて寝室へと姿を消す。


「お母さん…大丈夫?」


泣いている母を慰めようと後を追って声をかけると母は苛立ちを私に向ける。



「私が泣いてるのが嬉しいんでしょ!!?来るな!!」



母が泣いている事が悲しくて

慰めたくて

ただ自分は味方だと伝えたかっただけ。


だけど、想いを伝える事は許されない。


私は寝室の扉をゆっくりと静かに閉めた。