「私歌っていい?」


「どーぞどーぞ」


紗枝がマイクを握るとけんちゃんは笑顔で返す。


紗枝が歌っている間、耳元でけんちゃんに話しかけられた。


「紗枝と仲いいの?」


大音量の中、私は大きく頷いた。


「名前は?」


「さえこです」


「え?君の名前だよ?」


「私の名前がさえこです!」



調度そう言った後、紗枝がテレビにリモコンを向け音楽を停めた。


「ちょっと!紗枝が歌ってるのに聞いてよ!」


紗枝は冗談っぽく怒りながら注文したポテトを指でつまみ加えた。


「名前が似てるんだね」


「そうだよ!紗枝も会った時びっくりしたもん!ねっ?」


紗枝に振られて頷いた。



それから紗枝が歌って、私とけんちゃんが黙って聞いている。

30分くらいそれが続いた頃、けんちゃんは携帯電話を取り出し私達を置いて部屋を出た。