卒業式当日。


母は本当に来なかった。


父は来ていた事はわかったけど、5分もそこにいなかった。


卒業式では沢山の人が泣いていた。


私は涙の一欠けらさえ出て来なかった。


愛美に帰りがけみんなでご飯を食べに行こうと誘われたけど乗り気じゃなく断った。


花を渡しあったり、親子で写真を撮ったり。

周りの人達は何が嬉しくて笑っているのかわからず、ただその目に映る光景が腹立たしくて仕方なかった。


桜の咲いた帰り道を一人歩く。


家に着くまでに何度もため息をついた。


ドアを開けると聞き覚えのある声が耳に入る。

玄関に置かれた祖母の靴を見て安心した。



「さえちゃんおかえり、おめでとう」


「ただいま。ありがとう」


「今日はちらし寿司作るからね、さえちゃん好きでしょう?」


「うん!ありがとうばあちゃん」



母は私に見向きもせず
椅子に座って煙草を吸っていた。