卒業式前日。


母は腹の虫の居所が悪く
その被害が当然のように私に及ぶ。



「食べた皿くらい女なんだから洗え」



そんな事、言われなくてもわかっていた。


母が仕事の日は家族分のお皿を私が洗っていたのだから。


トイレに入っていた私にドア越しに言う。


「わかってるって」


トイレから出てお皿を洗っていると、洗剤で手を滑らせグラスを落として割ってしまった。


それは母がいつもお酒を飲む時に使っているグラス。


「え!?何割ったの…はあ?勘弁してよもう!!」


「ごめん、手が滑った」



「私それ相当気に入ってたのに!!」



でもそれは


「でもこれ100円でしょ?」


似たようなグラスはいくらでも家にあった。


「もう売ってないかもしれないでしょ!!数が合わないと嫌なの!ああもう本当に最悪!!最低!!」



たかがグラスひとつでここまで言われなきゃいけないのかと思った。