「あの子には確かに沢山苦労をかけてしまったからね」


祖母は申し訳なさそうに遠くを見つめて言った。

この時思っていた。

苦労したから私にあたってもいいのか、許される事なのか。

苦労してきた母に反抗する私は悪い子なのか。
最低なのか。


そんなはずはないとなぜ気付けなかったのだろう。


まだ幼かった私には
難しすぎる問題だったのかもしれない。



最後だった。

もう一度だけ頑張ってみようと思ったのは。


「高校に行く」


ここに来てもまだ
私は母にほんの少しの希望を持っていた。


母と仲良くなりたい。


そうは思わなかったけど、どこかにあるその願望が私を動かした。



それは母に対しての最後の希望。


抜け出せない深い穴に落ちて光などありもしないのに
錯覚の光を見て希望を持った幼い私は
その先にある絶望という物をまだ知らなかった。